†Orion†



――なんだ。

わざわざ店に来てくれたわけじゃないのか。


ほんの少しだけ残念に思ったけれど。

経緯はどうであれ、杉浦さんが俺に卵焼きを持ってきてくれたことは事実。

それが今は、素直にうれしい。



「……て言うか、でかいっすね……」



弁当箱は、俺ひとりじゃ食べきれないくらいのサイズ。

呆気にとられながらも、顔の筋肉が緩むのを感じる。



「うん。みんなで食べて?」


「……あ、“みんな”で?」


「うん」



屈託のない笑顔で杉浦さんは頷いた。