体育館に入って、あたしは周囲をキョロキョロと見渡す。


保護者席の最前列で、一人の男の人が、あたしにむかって大きく手を振っているのが見えた。

その仕草が、なんだか恥ずかしくて、あたしはうつむき加減でその方向へと向かう。




……ねぇ、雅人。

あたしは今、とても幸せだよ。

奈緒も、さくらも、みんな幸せだから。

どうか、心配したり、不安になったりしないで。



「すごいだろー、最前列!」



得意げに笑いながら、彼はビデオカメラのテストをしている。



「……ほんとに親バカなんだから」



あたしが呆れたように笑うと、彼は満面の笑みで言う。