“パパじゃないといやだっ!!” あの日。夕暮れの遊園地の観覧車のなかで、泣きじゃくりながら言った小さな女の子のことを思い出す。 その言葉をきっかけに、俺は現実を知ったんだ。 “好き”という気持ちだけじゃ、やっていけないことに。 皮肉にも、親父が言った言葉が当たっていたことに。 「奈緒……ちゃん?」 震える声で俺が訊き返すと、奈緒ちゃんは安心したように笑った。 「よかったー。覚えていてくれて」