「……料理長っ!」
翌日の夕方。
その日は特にやるべき仕事もなくて、定時でもある六時に帰ろうと決めていた。
毎日毎日、残業ばかり。
一日くらい定時で帰ったって、バチはあたらないだろう。
あと三十分で六時、というとき。
事務所でシフトを作っている俺を、増田が血相を変えて呼びに来た。
「どうした?」
慌てて呼ばれる時は、そのほとんどが客からのクレームだ。
肉が生焼けだったの、料理に何かが入っていただの、と。
でも今の時間帯は、料理を慎重に作り、丁寧に仕上げるメンバーばかりのはずだけど……。
「来ましたっ! 来たんですっっ!!」


