けれど、しばらく黙っている優菜を見て、ようやく俺は言葉の意味を理解した。
「……それがいいよ」
「それから……、メールも電話もしない。……会いたくなるから」
「……うん」
助手席に座る優菜の肩がかすかに震える。
エンジンを切った車内は不気味なほどに静かすぎて。
彼女の押し殺した泣き声が、その静寂の中に響き渡る。
「俺はずっと待っているよ。奈緒ちゃんたちの気持ちが変わるまで」
その日がいつになるかなんて、想像もつかない。
一週間後かもしれないし。
逆に、何年経ってもやってこないかもしれないし。
もしかしたら、優菜自身に他に好きな人ができて、その人が奈緒ちゃんたちの新しい父親になるかもしれない。


