†Orion†



「奈緒、何か見える?」



観覧車の窓の外に視線を向けたまま、こちらをまったく見ない奈緒ちゃんに、優菜が声をかける。



「………」


「……奈緒?」



返事すらしない奈緒ちゃん。

優菜は少し腰を上げて、奈緒ちゃんの顔を覗き込んだ。



「……どうしたの、奈緒? なんで泣いているの?」



無理やりこちらを向かされた奈緒ちゃんの目には、今にもあふれそうなほど涙が溜まっていた。



「……奈緒ちゃん? どこか痛いの?」



俺が訊いた瞬間、奈緒ちゃんの目から涙がポロポロとあふれ出す。