「妊娠はしてないよ」 俺が言うと、二人はそろって胸を撫で下ろした。 「でも雅人……、あんた大学を出たばかりじゃない。それで結婚っていうのは、早いんじゃないの?」 心配そうな顔でお袋がそう言えば、 「相手はどんな人なんだ?」 親父は、相手のことを訊いてくる。 相変わらず話がかみ合わない夫婦だ。 「相手は、同じ店で一緒に働いていた人。いまは仕事を辞めて実家に帰った」 「いまは、働いていないのか?」 「いや、運送会社の事務の仕事をしている」