『あ、雅人……。実家には着いた?』


「うん、いま着いたよ」



彼女に“雅人”と呼ばれることに、まだ慣れていない。

呼ばれるたびに胸がドキドキとうずく。

そして、彼女のことを“優菜”と呼ぶたびに、顔がカッと熱くなるのを感じてしまう。



『ゆっくりしておいでね』


「うん。……奈緒ちゃんたちの様子はどう?」


『……元気よ。奈緒もさくらも、新しい友達ができて、毎日楽しそうよ』


「そっか」



小学生になった奈緒ちゃんは、一学期の終わりに転校を余儀なくされた。

新しい友達ができた矢先の転校。

子供だったら「友達と離れたくない」と悲しむものなのに。

優菜が言うには、「しょうがないね」の一言で終わってしまったらしい。