「……雅人くん?」
玄関に突っ立ったまま、足が動こうとしない。
不安に駆られるがままに、俺の視線は自然と靴箱のうえにいく。
そこには、奈緒ちゃんの七五三のときに撮った家族写真があった。
だけど今は、何も置かれていない。
夜の七時。
奥にあるリビングからは、奈緒ちゃんたちの声はおろか、気配さえも感じられない。
「あがって?」
俺の様子に気づいた優菜さんは、苦笑しながら先に部屋のなかへと入って行った。
……まさか……。
一抹の不安を抱えながら、優菜さんのあとに続く。
何度も息を呑みながら、心臓の重苦しい音は速度を増していく。


