優菜さんは俺から目をそらし、デシャップに上げられたスープを手にした。 すぐ目の前にいるのに。 俺は雑念を振り払うかのように、彼女から視線を外した。 胸が、たまらなく苦しい――…… その苦しみを感じるたびに、優菜さんへの気持ちを思い知らされる。 「……雅人、あんた最近おかしいよ?」 八月後半。 夏季集中講義の最終日。 俺の変わりように、それまで沈黙を貫いていた弘美が、ようやく切り出してきた。 「何がおかしいんだよ」 「威張りくさっちゃって!」