†Orion†



子供ってのは、どうしてこうもお喋りなんだ?

考え事をする時間を与えてくれないくらいに、次から次へと機関銃のように喋り捲る。

よく話題があるもんだなぁ。


保育園で、ナントカ君がナニナニちゃんの粘土を取った、とか。

給食で出た味噌汁がおいしくてお替りした、とか。

ナニナニちゃんの水着は、ピンクのヒラヒラがついていて可愛かった、とか。



俺からすれば、“だからどうした?”という話ばかり。

ほとほと疲れてしまって、俺の顔は引きつり笑いになっているかもしれない。

なのに奈緒ちゃんは、目をキラキラさせて、どんどん俺の領域に入り込んでくる。



優菜さんはそんな俺を見て、時折、苦笑していた。

でも、奈緒ちゃんのお喋りをストップさせる気は更々なさそうだ。



「あら、杉浦さん。いま帰り?」



優菜さんが住んでいるのは、とても大きなマンションだった。

エントランスで一緒になった中年のオバサンが、優菜さんに声をかける。