奈緒ちゃんが子供だから、一生懸命やってくれたモノマネを褒めているわけじゃない。
“似ていない”と、はっきり断言した君のパパとは違って、俺は子供心が分かるんだぞ、と優越感に浸るための嘘。
あぁ、俺って最低じゃん。
幼い子供の真剣な気持ちを、下心アリアリで利用するなんて。
「納豆にはからし入れるほう~?」
なのに奈緒ちゃんは、嬉しそうに次々とモノマネを披露してくれて。
“似てないよ、奈緒ちゃん”と心のなかで突っ込みながらも、俺はひたすら褒め続けた。
スーパーで買い物を終えたあと、いよいよ優菜さんの家へと向かう。
どうして優菜さんが俺を食事に誘ったのか、理由なんて分からない。
どうして?
自分なりに模索してみるけれど、じっくり考える余裕もなかった。
「おにいちゃん、きいてよぉー。あのねぇ……」


