「別に? 何かおかしかったか?」
頬杖をついて、ふてくされたように窓の外に視線を向ける。
店の前にある横断歩道は赤。
信号待ちをしている歩行者のなかに、優菜さんの姿が見える。
外は相当暑い。
優菜さんは暑さを少しでもしのぐかのように、手を団扇代わりにしてパタパタと仰いでいた。
“主婦”だから、なんだよ。
誰かの妻という立場が、どれだけ偉いんだよ。
好きになっちゃいけないのか?
頑張ったらいけないのか?
“社員”と“パート”?
そりゃあ、立場をわきまえないといけないことぐらい分かってるよ。
だからって、絶対に顔を合わせないように仕組むことないだろ?


