†Orion†



「ねぇ、優菜さん。よかったら、これから一緒にお茶でもしない?」


「え……っ?」



誘う弘美に、優菜さんは困惑した様子を見せた。


その理由は分かっている。

また、ちらりと俺を見た優菜さんの視線。

それは明らかに、“雅人くんも一緒に?”と言わんばかりだった。


そんな彼女の視線は、俺を落ち込ませるどころか、逆に苛立たせる。

決して手が届くことのない、最愛の人――……



「弘美、優菜さんは忙しいんだよ。俺らとは違って、“主婦”だからな」



どうして俺は、子供みたいにムキになるんだろう。

黙っとけばいいじゃん。

意味深な優菜さんの視線も、軽く交わすぐらいの余裕を持つべきだろう?


“主婦”という言葉と、気楽な学生だという俺の立場。

そこを強調して言った俺に、優菜さんは、いつもの余裕たっぷりの笑顔で口を開いた。