†Orion†



俺のことを好きなくせに、楽しそうな顔して、何かと手助けしてくれる。

その心中はきっと、穏やかでないだろうに。


弘美が迷いもせずに向かった先は、俺たちのバイト先だった。


携帯の画面で時刻を確認する。

午後、三時。

たぶん優菜さんは、まだ店にいるはずだ。



「雅人」



店のドアを開ける前に、弘美がふと立ち止まって振り返る。



「いい? 暴走しないでよ? 料理長のこともあるから、あたしが協力するのはこれが最後だからね?」


「……分かってるよ」



言いながら、俺はどこかで弘美に甘えている。

暴走しそうになったら、こいつがきっと止めてくれる、と。