驚きを隠せない弘美に、俺は土曜日のシフト事情を話す。
もちろん、悪意があってのことではないことを強調しながら、慎重に。
「“愛のムチ”ってやつね。仕方ないわ、それは」
弘美はほんの少し、呆れている。
深く溜息をついたあと、彼女はさらに続けて言った。
「優菜さんに言っちゃったわけ? あんたも何だってそんなことしたのよ」
「……しかたないだろ。止められなかったんだから」
ムキになって言い返す気力さえも残っていない。
俺が溜息まじりに弱々しい口調で言うと、弘美までもが勢いを失くしてしまった。
それ以上のことは話をせず、俺たちは教壇の上にいる教授の話に聞き入った。
社会学の講義。
教授は真剣なまなざしでマイク越しに語りかける。


