衛生上の問題で、アクセサリー禁止の飲食店は数多く存在する。 でも、うちの店は、結婚指輪だけは許されている。 それなのに、優菜さんが指輪を嵌めない理由って、なんだろう……。 単に面倒だから? それとも、飲食店で働いているという自覚? 「あ……やばい。休憩、もうすぐ終わりだわ」 また、多くを語らずに、彼女は行こうとする。 「優菜さんっ」 「え?」 弁当箱を片手に更衣室に行こうと立ち上がった彼女を、俺は咄嗟に引き止めた。 「なんで……」