正式に決まってもいないことを簡単に暴露してしまった料理長を、軽く恨む。 「頑張ってね。これから大変だと思うけど」 励ます優菜さんに、俺は訊く。 「……優菜さんは、社員として働いたことある?」 俺と出会う前の彼女のことを、知りたかった。 それが本心なのに、俺は、 「社会人の先輩として何かアドバイスしてください」 と、嘘を付け加えた。 「あたしは……経験ないんだよね」 「えっ?」