夢をみさせて


「あ、私いいですから。
急いでないし…どうぞ」

私は精一杯の笑顔で彼に答えました。

「でも…
すごく欲しかったんじゃ…」

申し訳なさそうに彼は言いました。

彼はきっと私の泣いていた姿を思い出して
そういったのでしょう。


でも私の泣いていた理由は
そういうのではないし。

どういっていいのか
迷っていると

「やっぱ、
オレいいから。どうぞ」


彼はニコっと笑って
コバルトグリーンの
ポスターカラーを
私に押し付けて足早に
去っていきました。