先輩の言葉はあながち嘘じゃないな。確かにここは気持ちいい。さっき同様、どうしても虚しさは生じてくるけれど。
突っ立ってるのも微妙なので、とりあえず屋上に足を踏み入れた。そして大きく伸びて、深呼吸をする。
はぁ…と一息ついたところで、目の端に陰を捉えた。あぁ、先客がいたんだな。お互いにサボリの身、顔を合わせるのも気まずいので背を向けてフェンス側に行こうとしたとき、聞き覚えのある声が耳に届いた。
「…深谷君、だよね?」
いきなり呼ばれた名前に、動揺しないわけがない。ゆっくり振り向くと、笑みを浮かべた男テニマネージャーが立っていた。

