「なんか、長時間すみません。」 「あー…。いいって、いいって!気にしなーい。」 そう言って笑いながら大崎先輩はカバンを持ってドアに向かう。その後ろ姿を見ていると、いきなり振り返った彼女と視線が絡んだ。 「…話しなら、いつでも聞くから。 テニス部で待ってるよ、圭っ!」 呆気にとられる俺を残し、部室にはパタンとドアが閉まる音が響く。 “圭”、か…。 思わず笑みがこぼれる。名前で呼び捨てなんて、両親しかしねぇっつの。変わった女だ。