親父が社長、母さんが副社長。
自慢じゃねぇが、俺の家は五本指に入るほどの金持ちだ。

だから俺は堅苦しい家庭環境で育ち、学校だって金持ち学校として有名な凌葉学園に、幼稚舎の頃から通わされた。

今まで、金とかモノには不便を感じたことはない。だが、そんな俺を見る周囲の目は、明らかに好奇の目で満ちていた。


「あれが渡部財閥の一人息子よ。」

「じゃあもう、将来は社長の座が約束されているのね。」


どこにいたって、俺は“渡部財閥の一人息子”。“渡部”の名前が、俺には大きすぎた。