「ちょ、ちょっと隼人待っ……」

一方的に行くとだけ告げて電話は切られた。携帯を耳に当てたまま身じろぎも出来ない。

「逃げなきゃ……」

さっきまであれ程、隼人を信じようと自分に言い聞かせてきたのにイザとなると隼人が怖くてたまらない。

何故隼人が自分を狙うのか、何故自分が逃げなきゃいけないのか……そんな事を考える余裕はもう無かった。

ただ隼人が来てしまう前にこの場を立ちさらなければと晶は焦った。

激しい頭痛に耐えながら靴下を履きパジャマの上だけ脱ぎ捨てる。
ブラジャーをつける時間なんかもうない。

ベッドのしたからバッグを引っ張り出しトレーナーを頭からかぶった後、財布をポケットにねじ込んでスニーカーを履く。

廊下から漏れるナースの靴音が隼人のそれに聞える。恐怖で震える体を何とか押さえながら1分程で用意が出来た。