「ああ……大丈夫。何時もの夢だから」

「また……お義父さんの夢?」

それには答えず拓海はゆっくりと体を起こした。

後頭部が痺れて目眩がする。

「拓海さん可哀相……トラウマになってるのね」

ベッドの上で上半身を起こした拓海を利那がそっと抱きしめる。

「汗かいてるから汚れるよ……もう大丈夫だから」

妻の頭を撫でながらため息をつく。

トラウマと言われても仕方がない……拓海の父は15年前に事故で死んだからである。

拓海の父、義光は典型的な酒乱だった。

腕のいい左官職人だったが稼いだ金は全て酒やパチンコに注ぎ込み、負けては飲む、飲んでは負けるを繰り返した。

北条拓海(きたじょう たくみ)と6才年下の妹、晶はそんな父に怯えながら毎日を過ごした。