白煙の向こう《短編》



『でも好きやねん…、めっちゃ、なぁ、』



『なぁ、どうしたらいい?』




『なぁ、ホンマは、』




『ごめん、ごめんな。気持ち悪いやろ。ごめん、でも、吉原が、好きや』




…俺は知らない。


本当はあの夜のことを浅倉が全部覚えているということも。


俺の寝顔に向かって呟いたという言葉も。



俺は知らない。知る由もない。




焼き煙の向こうで、浅倉が泣きそうな顔をしていたということも。









(end.)