彼女の顔に陰りが入り込んだ。
彼女には分からなかった。彼が『そう』であると。

胸が大きく鳴った。

笑みを浮かべた知らない男が、一歩、自分に近づく。
かすかに感じる恐怖…
でも、目が離せない…


「あ…俺…」


何も、聞くつもりは、ない。


眉間に皺を寄せたのが自分でも分かった。
彼と同じだけ、後ずさりをする。


最後の迷子が2人の間に落ちる。


彼に背を向けて、白くなりきっていない道を歩いていく。


…前を見つめる目が、彼を振り替えることは、無かった…