「あやちゃんがいないと華がないよね僕ら。」



絢音が決意した日から数日が経ったある夜。
陽が突然そんなことを言い始めた。



「おい、それ禁句だぞ。
俺だって言うの我慢してたのに。」


翔が頬を膨らませながら続ける。



絢音は次の日翔や陽にも自分の思いを伝え、社長にもその旨を伝えた後から本格的にレッスンを開始しデビュー曲の作成に明け暮れていた。


学業にバイトを掛け持つ絢音に、もちろん俺たちと呑気にパーティーする暇なんてない。



「仕方ないだろ?」


俺が雑誌のページをめくりながらそういうと、2人がすごい勢いで歩みよってきた。


「空は寂しくないの?!」


「まさかお前だけこっそりあやと会ってるんだろ!!」


「会ってねぇよ!仕方ないだろ。
アイツは俺らが練習してる時も、ツアーで長期間いなかった時も待ってたんだ。今は俺らが待つ番だろ?」



俺がそう言うと、耳元で騒いでいた二人の声がぴたりと止んだ。



「そうだよね。あやちゃんいつも笑顔で“待ってるよ”って僕らのこと送り出してくれたよね。」



「そうだよな。俺待たせることに慣れ過ぎて、待ってるあやの気持ち考えたことなかったのかもな。」



シュンとする2人を横目に見ながら俺は次のページをめくった。