「どうして教えてくれなかったの?」 本当は、訊く必要なんてない。 矢澤君の優しさに気付いてしまった。 『一週間、ゆなが他の女から何もされなかったら……』 あの約束は、前も今も、有効なものではないから。 「忘れてた」 「……」 その言葉が本当かどうかは知らないけれど。 私は鞄からケータイを取り出して言った。 「赤外線、いい?」