娘の由美子は、プロの音楽家を目指していた。 男性に興味があるのかないのか、私にはわからなかった。 娘の結婚なんてまだまだ先だと思っていた頃。 一度、由美子が仁ノ介君の写真を見たことがあった。 病院のみんなで温泉旅行に行ったときの写真。 由美子は、10人ほどの男性の中から、仁ノ介君を指差した。 「この人かっこいい!お父さん、紹介してよ!」 適当に笑って、由美子のお願いをさらっと流した。 仁ノ介君は、女性に困ることはないだろう。 娘の相手なんてとんでもない。