残されたあたしと、武人。 立っている位置は未だ変わらなくて。 視線も会話も絡まず、ただ突っ立っていた。 「……まったく」 武人が溜息まじりにボソリと呟いて、ようやく動き始める。 「どうぞ」 「……おじゃまします」 鍵を開け、続いて勢いよくドアを開ける武人は、愛想笑いひとつしない。 あたしは見ず知らずの人の家に初めて入るような感覚で、身を縮めて中に入った。