「もう武人っ、先に行かないでよ。あたし、傘持ってない……」 ――え……っ? なん……で……? 口を尖らせて文句言いながら武人に駆け寄ってきたのは、悦子さんだった。 「あ……。梓ちゃん!?」 「……悦子さん……」 あたしに気づいた悦子さんは、気まずい表情をするどころか、とても嬉しそうな顔をして駆け寄ってきた。 「久しぶりだねーっ。元気にしてたー?」 悦子さんは興奮したように、あたしの両手をぐいっと掴み、ぶんぶん振りながらはしゃぐ。