「は? あたしの頼みが聞けないわけ?」
『いや……、て言うか、無理なもんは無理……』
「へえぇぇぇぇぇ」
特に意味のない“へぇ”に、信一くんは態度を急変させる。
『いっ、行きます! いえ、ぜひ行かせてくださいっ!』
「よし。ドリンクバーおごってやるから」
『……ドリンクバーかよ』
「は?」
『いえっ、すぐ行きます!』
信一くんは慌てて電話を切り、あたしは一足先にファミレスで待つことにした。
それから三十分ほどして、制服姿の信一くんが、周囲の視線を気にしながら店に入ってきた。
挙動不審なのも無理はない。
平日の真昼間に、高校生が制服姿でファミレスに行くんだから。


