「あ、もしもし? 信一くんっ!?」
大股でズンズン歩きながら、あたしは携帯を取り出し、信一くんに電話する。
市橋くんに対する怒りと、武人に対する苛立ちと不安。
とにかく誰かにぶつけたくて。
咄嗟に、信一くんの顔が浮かんだ。
『ど、どうしたんですかっ?』
怒り口調で電話をかけてきたあたしに、信一くんが動揺している姿が目に浮かぶ。
確か今の時間って、高校生はお昼休み……。
「今すぐ、T大前にあるファミレスに来て! ……って言うか、来いっ!」
信一くんが通っている江南高校は、あたしたちの大学に近い。
命令するあたしに、信一くんは生意気にも反抗してきた。
『無理っ! 俺、まだ授業あるしっ』


