恋*クル〜2nd〜



何も喋らない市橋くん。

あたしは不安になって泣きそうになったことを、今でも覚えている。


市橋くんは突然、大きく深呼吸をして。

覚悟を決めたような顔で、あたしをじっと見つめた。


手袋をしていない市橋くんの冷たい手のひらが、あたしの右頬を包み込む。

ひやり、とした感触に、あたしの体がビクンとわずかに震えた。


ゆっくりと近づいてくる市橋くんの顔。

あたしの胸はドクドクと鈍い音を立てながら暴走し始める。

自然と目を閉じた瞬間に、市橋くんはあたしの唇にキスを落とした。



それは、軽く触れる程度のキス。

キスの後は、なんだか恥ずかしくて、あたしたちは意味もなく笑った。


キスをした後は、する前よりも、もっともっと市橋くんを好きになってしまった。


でも――……