市橋くんはいつも楽しそうに、武人を茶化していて。 あたしはそんな彼を見ていると、とても複雑な気持ちになるんだけど……。 いつだったか、去り際に市橋くんがボソリと耳打ちしてきたことがあった。 「江田のこと、吹っ切る自信あるから。心配すんな」 そう言った市橋くんの顔は、とても晴れ晴れとしていて。 あたしみたいな女、とっとと忘れて。 もっと良い子と出会って、素敵な恋をしてほしい。 心の底から、市橋くんの幸せを願った。 ――そして…… もうひとつ、あたしが気がかりだったこと……。