「――ところで梓ちゃん」 「………?」 あたしの口を塞いでいた手をゆっくり放しながら、武人が改まって言う。 「今晩あたり、どうでしょうか?」 「……はっ!?」 今の今まで、すごく深刻な話をしていて。 すべてをなかったことにしよう、と、穏やかに笑う武人に涙したのに。 予想もしていなかった、突然の、そして急な誘いに、あたしは開いた口が塞がらない。 「覚悟、出来てるんだろう?」 「……あ……、いや……あの……」