大学からアパートに、ひとりで帰るとき。 あたしはいつも、足早に歩いていた。 周囲の人が見れば、 “なにをそんなに急いでいるんだろう?” それくらいの歩調。 あたしが一人で帰るときは、武人が自分の部屋であたしを待っているときだ。 早く、会いたくて。 一秒さえも惜しいくらい、あたしはとにかく急いでいたんだ。 でも、武人と距離を置いてから。 あたしの歩調は驚くぐらいに遅くなった。 帰りたくない。 武人のアパートが視界に入るだけで、胸が痛み、そして苦しくなった。