信一が俺のアパートを出たのは、空がすっかり暗くなった頃だった。 窓辺に置いているモンキーポッドの葉を、そっと撫でる。 この木が大きく成長していくのを一緒に見守るのは、梓なのかな――…… 右手に握った携帯を、パチンパチンと音を立てながら開け閉めする。 梓に、電話を――…… 話がある。 今から会えないか? 市橋とのことで…… 電話での第一声を、繰り返し頭のなかで思い浮かべるものの、指先はいっこうに梓の番号を押そうとしない。 「………」