麗の大きな瞳から、涙がぽろりと零れ落ちる。 「彼の家庭を壊したらいけないって分かっているのに。別れようって思っているのに、言葉が出てこないの」 「でも……」 ……言葉が、出てこなかった。 彼と別れることが、いちばんいい選択だと思う。 親友なら、はっきりと言うべきなのかもしれない。 だけど、彼を深く思う麗に、あたしは何も言葉を返すことができなかった。