一歩踏み出さないと、こじれたままの状態が続く。 気持ちを切り替えて、“何もなかった”ことになんかできやしない。 梓との接触を避け続けて自然消滅、なんてのも嫌だ。 「………」 とても深く、長い溜息をこぼしたあと、 俺はゆっくりと立ち上がり、梓のアパートへと向かった。 梓のアパートまでの短い距離。 いろんなことを思い出だす。 高校時代のこととか、初めて出会ったときのこととか……。 そして、ふと思う。 あの頃は、まだ幸せだったな――……