――“おまえ、最低だな” 梓の首筋にうっすらと残っていた薄紫色の痕。 すぐにその相手が市橋だと分かった。 あのあと梓は、何も言わずにすぐアパートを飛び出して行った。 静かに閉められた玄関のドア。 バタバタと部屋の外から聞こえた、走り去る足音。 追いかける気にもなれなくて、俺はベッドの中でギュッと固く目を閉じた。 信じていたのに 市橋とは、なにがあっても間違いなんか起こらないって――……