もうこれ以上、嘘をつくことなんかできない。 真実に繋がるものを武人が見てしまった以上、弁解の余地すらない。 「……ごめん」 小さく言葉を発したあたしに、武人は何も言わない。 表情さえも淡々としていて、怒りもショックも悲しみも、何も感じられなかった。 「――おまえ、最低だな」 初めて聞いた、あたしを非難する武人の言葉。 罵倒するわけでもなく、武人は落ち着いてさらりと言ってのける。 身動きすらできないあたしを洗面所に残して、武人はその場を立ち去って行った。