涙目になって拒否するあたしを見て、武人はフッと笑った。



「――分かったよ。また今度、都合のいいときに泊まればいいし」

「うっ……うん……っ」



ホッと胸を撫で下ろすあたしに、武人はもう一度キスしてくれた。




――彼氏の部屋に、一泊する。

それが何を意味しているのか……。



あたしは、つまり……、経験がないわけで。


武人の前に付き合った彼氏・市橋くんとは、キスさえもしなかったプラトニックな仲だったわけだし。



はぁ……。

付き合い始めてもうすぐ二年になろうとしているのに、未だキス止まりなんて。


いい加減そろそろ……って思ってはいるけど。

やっぱり怖くて、あたしはなかなか踏み出せないんだ。


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