「――武人に話せばいいじゃない……」
ほとんど自棄になってフッと笑いながら言った瞬間、涙がポロリと頬をつたう。
「武人に話せば、市橋くんの望みどおりヨリを戻せるでしょ?」
「……なに言ってんだよ」
「それが狙いだったから、あたしが酔ってるのをいいことに無理やりやっちゃったわけでしょ?」
「……無理やりって言うか……」
顔を少し歪ませた市橋くんは、あたしの隣に腰を下ろして言う。
「俺も酔っていたし。酒に酔うとさ、好きだって気持ちに歯止めが利かなくなるんだよ」
「………っ……」
頭をポンポンと撫でられ、ゆっくりと零れていた涙が、どっと溢れ出した。
「金森には話さない。やっぱり……こんなのフェアじゃないよな」
市橋くんは続けて「ごめん」と謝ると、そのまま部屋を出て行った。


