「……ひどいよ……」
「ちょっ、待てよ。そりゃ、合意の上ではなかったことは悪いと思っているけど……っ……」
記憶が飛んでいるあいだに、市橋くんと関係をもってしまったこと。
それは確かに悲しくて、酒に酔ってしまった自分をすごく恨んだ。
――だけど……
本当に、心の底から悲しかったのは、初めての相手が武人ではなくなってしまったこと。
初めてだからこそ、武人はあたしの気持ちを尊重して待ってくれていた。
あたしもあたしで、初めての相手が武人であることを信じていた。
なのに――……
「まぁ、過ちを犯してしまったってことで……。黙ってればバレないって」
……そういう問題じゃない。


