「……で、その後は……?」
「グダグダになってる江田に必死で住所を訊き出して、俺がここまで送ってきた」
市橋くんは眠たそうな顔で、寝癖のついた髪を手のひらでわしゃわしゃとかき乱す。
そんな市橋くんに、あたしはドクドクと落ち着かない心臓を抱えながら切り出す。
「……その……あとは……?」
「そのあとは……見てのとおり」
へへっと、ふざけて笑う市橋くんには罪悪感のかけらもない。
「やっちゃ……った?」
「うん」
すんなりと認める市橋くんに対して、ここは怒りをぶつけるところなんだと思う。
でも、今のあたしには怒りよりも悲しみが襲ってきて、涙がポロポロと零れ落ちてきた。


