-恐怖夜話-


『陰鬱な』、


そんな単語がびったりくるような、心の動きが見えない暗い表情が、脳裏に焼き付いて離れない。


あの、引き結ばれた薄い唇の上の瞳には、いったいどんな表情が浮かんでいたのだろう?


ゾクリと背筋に悪寒が走り、私は思わず足を止めてブルブルと頭を振った。


「リエ、どうしたのー? 平気?」


隣を歩いていた若菜が、数歩行きすぎてから心配げに振り返る。


「あ、ううん、平気、平気!」


やめやめ!


気にしたって、仕方がない。


こんな、ウジウジ悩むのは、性に合わないや。


こう言う時は、気分転換するに限る。


そう考えた私は、


「ねえ、気分直しに、少しカラオケやっていかない?」


二人に向かって、いつものように元気に提案した。