実は、写真を撮ったのは『私のカメラ』なのだ。
確かに、通りすがりの誰かに頼んで撮ってもらった写真なので、『自分が写した』わけではない。
でも、それでも、『写真の持ち主』と言うことには変わりがない。
だから正直言って、この写真を家に持って帰らずにすむ先生の申し出は願ってもないことで、私は心底ホッとしていた。
「そうと決まったら、ほらほら、帰った帰った。今時、人間の方がよっぽど怖いんだからね!」
あくまで明るい先生の檄(げき)に背中を押されて、私たちは机に散らばった他の写真をめいめいに鞄にしまうと、足早に教室を後にした。
全てが、夕日の残照を受けて朱に染まる中。
秋の気配が濃く漂う、少し冷たい風に吹かれて。
――そうよ。
きっと、大丈夫。
先生の言う通り、ただの思い過ごしに違いない。
心霊写真かもしれないモノを撮ってしまったという、大きな不安感。
そして、それを『先生がなんとかしてくれる』という、幾ばくかの安堵感に包まれながら、私たちはいつもよりも言葉少なく帰路についた――。



