-恐怖夜話-


元気にピースサインを送る、上背のある雅美が上げた腕に隠れるように、ひっそりと佇む少女。


よく見ると、私たちのブレザー型で濃紺の制服とは明らかに違うデザインの、黒地に朱のラインが入った見慣れないセーラー服を着ている。


長いストレートの黒髪。


青白いような肌。


血の気のない、引き結んだ薄い口元。


目元は、私と雅美の体に隠れて、見えてはいない。


はっきりとした顔かたちが判別出来る訳じゃない。


でも、


だれもこの少女を知らないと言うことだけは、紛れもない事実だった――。