「よし。兄さんには悪いけど、電話しちゃおう!」 背に腹はかえられない。 私は、ハンド・バッグから携帯電話を取り出し、短縮に入れてある自宅の番号を押した。 プルルルッ。 プルルルルッ。 薄暗い駅の構内に、携帯電話の甲高い呼び出し音が鳴り響く。 いつもなら遅くても5コールもすれば、母は電話に出る。 なのに、今日は一向に出る気配がない。 「もう、寝ちゃったのかなぁ……」